僕は犬が嫌いだった。
忘れもしない、小学5年生の夏。
それまで親友のように仲むつまじかったアイツが、突如僕の右手に噛み付いた。
ギャフン!
痛かった。それはとても。
今でも古傷が残っている。
男には消せない古傷が幾つも残っているものだ。
それ以来、僕は犬が嫌い。
昨日は、千葉界隈の読売新聞購読者に配られている雑誌「ALL TOGETHER」で書いている僕の連載記事「ニシチバカ!」の取材で西千葉にあるスーパー銭湯の先駆け、「ビバークランド」へと行って来た。
そこには最高に素敵なダンディ、ロード裕之さんが待っていた。銭湯を経営しながら役者稼業を営んでいるロード裕之さん。
いや、マジでダンディ。
この人をダンディと呼ばず、誰をダンディと呼ぶのだろうか。
素敵な笑顔、素敵な声、将来の理想的なダンディ像だった。
まぁ、それは記事にて力説しているのでいいとして(笑)、その銭湯には愛犬がいた。
愛犬、クッキー。
20kg以上もあるクッキー。
どどん。
でかい!!
そう、僕は犬が嫌い。
デカイ犬はなおさら。
とっさに僕は無理だと思った。
「かわいい!」と言いながら、そそくさと距離を空けた。
我ながら演技派だ。
そのときロード裕之さんが言った。
「抱いてみる?」
って。
無理ー!!!
でも、貴臣は男の子。
ここで犬を抱かねば、松尾家の孫の代まで罵られるだろう。
それは我が子孫のためにも避けねばならぬ事態。
決心した。
そう、そのとき歴史は動いた。
抱いてやる。
えい!!
め、目が完全に笑っていない!
またひとつ修羅場を乗り越えて、貴臣は大人になりました。