ブルガリブラック

大学1年の頃、「大学生になったし、そろそろ香水つけなきゃでしょ」という何となくな理由で八王子の香水ショップへ、当時高尾に住んでいた小学1年生からの幼馴染みの和田と共に行った。多分高尾へ遊びに行った帰りか何かだろう。


初めて見る大量の香水。何がいい匂いなのか何てよく分からない。香水なんて体に付けてみないと本当の匂いは分からないのだ。僕は無知だった。経験が無かった。


だが、僕は自分が無知であることを知っていた。


そう、無知の知だ。


・・・で、仕方無いので、1つ1つテスターを嗅いで1番いい匂いを探した。

そう、直感だ。


そこで「これだ!」と見つけ出した香水があった。


「ブルガリブラック」!!



説明を見てみると「GLAYのJIROも愛用」と書いてある。
GLAY全盛期の頃だ。HOWEVERが大ヒットした翌年だ。

JIROが使っているのなら間違いないと僕は思った。意気揚々と購入した。

それがブルガリブラックとの出会いだ。



以後9年、今日に至るまで僕はブルガリブラックを愛用している。

途中でサムライとスカルプチャーに少しだけ浮気したが、「やっぱりお前しかいないよ」と思い直し、今では一生手離せないだろう存在だ。クセのない甘い匂いが売りだ。


この前長崎に帰ったとき、アミュプラザという駅ビルの香水屋にブルガリブラックが売っていたのを発見した。値段を見ると千葉の2倍近く高かった。ショックだった。


しかし、それ以上にショックだったのが「玉木宏も愛用」と書いてあったことだ。


もうJIROの時代は終わったんだね。とめどなく注ぐ愛の名を永遠と呼ぶことはできなかったんだね・・・。






そう言えば、その9年前その八王子で各々納得の行く香水を購入し、身につけた僕と和田は「やっぱ大学生やしナンパばせんばやろ」と息巻いて人生初のナンパを試みた。

しかし、実際女の子を前にすると、緊張して「何してるんですか?」という誘い文句しか出て来ない貧困なボキャブラリーが災いし、何度も玉砕。

1時間ぐらい頑張ったが諦め、高尾へ再びスゴスゴと舞い戻った。


田舎の野球部出身の少年たちにとって、都会の壁は高いと痛感した瞬間だった。僕らは無知だったのだ。


・・・無知の知だ。


突然見ず知らずの男から「何してるんですか?」って聞かれてもね・・・。




人間、香水じゃないんだね。